上場株式の配当金には原則として合計20.315%の税金がかかります。 確定申告は「申告不要・総合課税・申告分離課税」の3つから選べますが、どれが有利かは所得水準や損益の状況によって変わります。一般に、所得が低めの方は総合課税で配当控除を検討する余地があり、株式の売却損がある方は申告分離課税で損益通算できるとされています(出典:国税庁 タックスアンサー No.1330、No.1331)。ご自身の状況に合った選択は、税理士にご相談ください。
2026年6月時点の国税庁・金融庁の公式情報をもとに、仕組みと判断軸を整理します。
配当金にかかる税率20.315%の内訳
上場株式の配当金を受け取ると、受取時点で税金が源泉徴収されます。税率の合計は20.315%で、内訳は所得税および復興特別所得税が15.315%、住民税が5%です(出典:国税庁 タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm)。
証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、配当の受取時に自動で差し引かれるため、何もしなければ「確定申告不要制度」で完結します。この制度を選んだ場合、配当の申告は不要であり、確定申告書を提出する義務は生じません。
なお、大口株主(一定割合以上を保有する個人)が受け取る配当については扱いが異なります。詳細は国税庁の公式情報をご確認ください。
3つの課税方式の比較表
上場株式の配当には、次の3つの課税方式から選択できるとされています(出典:国税庁 No.1330、No.1331)。
| 比較項目 | 申告不要制度 | 総合課税 | 申告分離課税 |
|---|---|---|---|
| 税率の考え方 | 源泉徴収の20.315%で完結 | 他の所得と合算した累進税率 | 一律20.315% |
| 配当控除 | 使えない | 使える | 使えない |
| 上場株式の譲渡損失との損益通算 | できない | できない | できる(同じ申告分離課税の損失に限る) |
| 確定申告の要否 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 向きやすい人の一般的な傾向 | 手間をかけたくない方 | 課税所得が低めで配当が多い方 | 株式の売却損がある方 |
※この表は制度の概要を整理したものです。実際の有利不利は個々の所得・損益状況によって異なります。
総合課税と配当控除の考え方
総合課税を選ぶと「配当控除」が使えます。配当控除は、法人の利益に法人税が課されたうえでさらに個人の配当に所得税がかかる、いわゆる二重課税を調整するための税額控除です(出典:国税庁 タックスアンサー No.1250 配当所得があるとき(配当控除)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm)。
配当控除の率は、受け取った配当の種類(剰余金の配当か、証券投資信託の収益分配かなど)や課税総所得金額の水準によって変わります。一般に課税所得が低い方ほど、総合課税+配当控除を選んだほうが源泉徴収のみで完結するよりも税負担が下がる場合があるとされています。ただし、合算することで住民税の負担が増えるケースもあるため、試算が必要です。
個別の税額計算や申告方針は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや、税理士にご相談されることをお勧めします。
申告分離課税と損益通算の考え方
申告分離課税を選ぶと、その年に生じた上場株式等の譲渡損失と配当を相殺する「損益通算」ができます(出典:国税庁 タックスアンサー No.1331 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm)。
たとえば、株式の売却で損失が生じた年に申告分離課税で配当を申告し、損失と通算すると、源泉徴収済みの税金の一部が還付される場合があります。通算しきれなかった損失は翌年以降3年間にわたって繰り越せます(出典:国税庁 タックスアンサー No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm)。
ただし、損益通算は申告分離課税の配当のみを対象とする点に注意が必要です。総合課税で申告した配当は損益通算の対象外になります。
シナリオ別の判断軸
以下は一般的な傾向を示したものであり、個々の具体的な税額はご自身の収入・控除・損益状況によって変わります。実際の申告方針は税理士または国税庁のシミュレーションツールで確認してください。
シナリオ1:給与所得者で配当収入がそれほど多くない方 特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、申告不要制度で手続きなく完結します。配当控除の恩恵が出るかどうかは所得水準次第であり、給与収入が一定水準を超える場合は総合課税にすることで税率が上がる可能性があります。
シナリオ2:パートタイムや退職後などで課税所得が低い方 所得税率が低い水準にある方は、総合課税+配当控除を選ぶと税負担が下がる場合があるとされています。ただし住民税の取り扱いも含めた試算が必要です。
シナリオ3:株式の売却損が生じた年 その年に上場株式の譲渡損失がある場合、申告分離課税で配当を申告し損益通算することで還付を受けられる可能性があります。証券会社からの年間取引報告書を手元に用意して申告の準備をしましょう。
シナリオ4:新NISAを活用している方 新NISA口座で保有する株式の配当は非課税です(出典:金融庁 NISAを知る https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html)。ただし非課税で受け取るには、証券口座での配当受取方式として「株式数比例配分方式」を設定しておく必要があります。銀行口座など別の受取方式になっていると、NISA口座の株式でも課税されてしまいます。口座開設後に証券会社の受取方式の設定を確認することをお勧めします。
シナリオ5:複数の証券会社に口座がある方
配当や譲渡損益が複数の口座に分かれている場合、口座をまたいだ損益通算は確定申告でのみ行えます。片方の口座で生じた損失をもう片方の口座の配当と相殺したいときは、両方の年間取引報告書をそろえて申告分離課税で申告することを検討してください。
新NISAの非課税制度と配当受取の注意点
新NISA口座には「成長投資枠」と「つみたて投資枠」があり、それぞれ年間投資上限が設けられています(2026年6月時点)。新NISA口座で保有している間に発生した配当・分配金は非課税の対象となります。
注意が必要なのは「株式数比例配分方式」の設定です。これは証券口座内で配当を受け取る方式であり、銀行振込や郵便局受取に設定していると、NISA口座の株式であっても非課税の扱いになりません。口座開設時や証券会社のマイページで設定状況を確認することをお勧めします。
また、新NISA口座で保有している商品の売却益も非課税となりますが、NISAでの損失は他の特定口座の利益と損益通算できない点も確認しておきましょう。
配当税に関するよくある誤解
誤解1:「配当控除を使えば必ず得になる」 総合課税で配当控除を使うと有利になる場合がありますが、他の所得との合算で税率が上がるケースもあります。所得税で配当控除の恩恵があっても、住民税が増える場合があるため、必ず試算が必要です。
誤解2:「損益通算できる組み合わせは何でもOK」 上場株式の譲渡損失と申告分離課税の配当は通算できますが、総合課税で申告した配当や、NISA口座の損失は通算の対象外です。組み合わせには制限があります。
誤解3:「NISAにすれば配当は自動的に非課税になる」 NISA口座の株式を保有しているだけでは不十分で、配当を非課税にするには「株式数比例配分方式」の設定が必須です。設定を忘れると課税されてしまいます。
ここまでの整理から言えること
配当金の課税方式の選択は、一見シンプルに見えて、所得水準・損益状況・住民税への影響・NISA口座の活用状況が絡み合う複雑な判断です。「総合課税が得」「申告分離課税が得」と一律には言えず、同じ配当金額でも人によって最適解が変わります。まず国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使って試算し、不確かな場合は税理士に相談することをお勧めします。本記事はあくまで制度の概要を公的情報に基づいて整理したものであり、個別の税務判断の根拠となるものではありません。
まとめ
上場株式の配当金には原則20.315%が源泉徴収されます。申告不要制度で手続きなく完結させることができますが、課税所得が低い方には総合課税+配当控除、株式の売却損がある方には申告分離課税での損益通算が有利になる場合があります。新NISA口座の配当は非課税ですが、「株式数比例配分方式」の設定が前提です。ご自身の状況に合った選択のためには、国税庁のシミュレーションツールや税理士への相談を活用してください。
本記事は運営者情報に基づき、公的情報をもとに編集しました。
税金に関する注意事項:本記事は2026年6月時点の国税庁・金融庁の公式情報をもとに、制度の概要を一般的に解説したものです。個別の税額計算・申告方針・節税効果の判断は、ご自身の収入・損益・控除の状況によって異なります。具体的な判断については、必ず税理士または税務署にご相談ください。本記事の内容は税務・法律上のアドバイスを構成するものではありません。
参考文献
- 国税庁 タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1250 配当所得があるとき(配当控除) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
- 金融庁 NISAを知る(NISA特設ウェブサイト) — https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html
気になる疑問に答える
Q. 配当金は確定申告しなくてもよいのですか?
A. 上場株式の配当は受取時に源泉徴収されるため、確定申告不要制度を選べば申告は不要です。ただし総合課税で配当控除を活用したり、損益通算したい場合は申告することで有利になる場合があります(国税庁 No.1330)。
Q. 総合課税と申告分離課税はどう違いますか?
A. 総合課税は他の所得と合算して累進税率で課税され、配当控除が使えます。申告分離課税は上場株式の譲渡損失と損益通算できます(国税庁 No.1331)。
Q. 新NISAの配当は非課税ですか?
A. 新NISA口座で保有する株式の配当は非課税です。ただし非課税で受け取るには受取方法を「株式数比例配分方式」に設定しておく必要があります(金融庁)。
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